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山本:「コロンブスそっくりそのまま航海記」(原題:『The voyage of NINA II』)は、冒険小説並みのロバート・F・マークス氏の実体験を綴ったものです。知己である芝田さん(朝日新聞出版編集長 芝田暁氏)を通じて、ぜひ翻訳を風間さんにとお願いした甲斐あって、原書のニュアンスを充分に活かしていただきました。
風間:私にとっては初めて手がけるノンフィクションで、とても興味深い仕事でした。

山本:今回はマークス氏にとっても60冊以上におよぶ著作の初の日本語訳です。予想以上に素晴らしい仕上がりと大きな反響に、社をあげて本当に喜んでいます。
風間:お話をいただいた時点では事実だけが並ぶ淡白なものかと思ったのですが、もう導入部からいきなり危機的な状況で、強く引き込まれました。場面の一つひとつがまるで映画のようですよね。たとえば前半の、乗組員を一人ひとり集める過程では黒澤明監督の「七人の侍」を思い出しました。とにかく凄い老人、牧師さん、おかしなフランス人……一癖も二癖もある仲間ばかりが集まってきて。そもそも、船の持ち主とスペインで度胸試しを始めるエピソードからして面白い。
山本:それだけで半分費やしていますが、あっという間に読めてしまいますね。
風間:後半、いざ航海に乗り出せば危機一髪の状況が続けざまに発生する。本当に事実なのか疑わしいくらいの面白さで読み手をぐんぐん引っ張っていく。これが上等なノンフィクションの醍醐味なのだと感じ入りました。
山本:原書を読まれて、ロバート・F・マークス氏の人柄にどんな印象をもたれましたか?
風間:揺るぎない信念のもとに、的確な指導ができる。強い意志を持つ人だな、と。
山本:たしかに。今、彼のドキュメント番組を撮るためにクルーが張り付いているのですが、気苦労が絶えないとか(笑)。70歳を超えて、ますます仕事に対してのこだわりが強くなってきているようですね。当社の場合、志を共有していることと、そして後書きを書かせていただいた井上愛子が連絡役として上手く間に入ってくれていることもあり、彼とのバッテリーは堅固なんですよ。
風間:日本近海での引揚げは考えていらっしゃるのですか?
山本:予定はあります。日本近海だけで20隻分くらいの文献を調べ上げていますね。以前来日した際に、長崎の出島に降り立った途端、「こんなに埋め立てしやがって!」と怒り出したんですよ。
風間:我が強い人らしい、というのは原文からも伝わってきます。
山本:「破片のひとつひとつがどのくらい価値あるものなのか知っていて、全部揚げてから埋めたんだろうな!」と。根っから学者肌なんですね。遺物の歴史的な価値を本当に大切にしています。
風間:番組が放映されたら、日本でも大きな反響がありそうですね。今回の出版や番組の放映で知名度がぐんと上がりそうです。
山本:日本での引揚げは彼のライフワークのひとつでもあります。その実現を早めるためにも、所有権を明確化する法整備が必要です。また、彼は功績も多く、日本で知られていないのが不思議なくらいの有名人ですから、もっとアピールしなければと思っています。そういった事情も含めて、こうして出版や放映といった形で業績とともに認知してもらえるのは、とても喜ばしいことですね。