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山本:風間さんはもともと翻訳家を目指されていたのですか?
風間:どちらかというと評論家志望でしたね。昔から本を読むのが好きで、趣味を仕事にできたらいいだろうなという気持ちもあり、翻訳本が8割を占める早川書房に入社したのです。
山本:早川書房さんはエンターテインメント系の小説が充実していますね。
風間:はい。大学までは結構お堅い文学青年だったので、それまであまり縁がない分野でした。当時すでにベストセラー作家だったスティーブン・キングの作品も扱っていたので、まず「霧」という中編作品を読んでみたら面白くて。ちなみに「霧」は去年「ミスト」というタイトルで映画にもなりました。続いて「シャイニング」「スタンド・バイ・ミー」「IT -イット-」など次々と夢中で読んで、この人は生まれながらのストーリーテラーなのだと感嘆しました。そして、ぜひ自分も訳をしてみたいと思っていたのです。
山本:キングの翻訳は難しそうですね。
風間:アメリカ文化に馴染んでいないとね。単語だけポンと出てくると、それが人名か店名か商品名なのかで判断に悩みますね。下手すると勘違いして訳してしまうことになりかねない。
山本:彼の出身地であるメイン州の土地柄を理解していないとこんなに臨場感のある雰囲気は出せないのだろうな、とも感じます。
風間:そうですね。メイン州には二、三度訪れてみて、ご本人ともお会いしたことがあるんですよ。
山本:ああ、それはいい経験をされましたね。
風間:ああこういう感じなのか、これなら吸血鬼も出そうだな、と納得できた場所でした。
山本:吸血鬼か。風間さんが全巻訳された<ダーク・タワー>シリーズもそんな重厚な雰囲気がありますよね。
風間:そうですね。彼のライフワークといえる<ダーク・タワー>シリーズを全巻任されたことは、翻訳者冥利に尽きますね。あのシリーズは長いブランクの末、キングが事故に遭ったおかげで完結できたらしいですよ。瀕死の重傷を負って「これはヤバい、いつ死ぬかわからない。きちんと終わらせなくては!」という危機感が芽生えたのでしょうね。
山本:そして今回は物語ではない、マークス氏の実録ものに挑まれたのですね。
