サルベージの手順

1.古文献等による調査・分析

沈没船発見の重要な手掛かりは歴史的古文献です。例えば大航海時代、スペインやポルトガルでは船の積荷に対する課税制度があったため、船の出港地や目的地、積荷、船員名簿などの詳細な情報が膨大な公文書として残されています。また、沈没した船の生存者や同じ艦隊の目撃者が沈没船情報を文献として書き記しているケースもあります。ロバート・F・マークス氏は古語を含めた数々のヨーロッパ言語に精通しており、スペインやポルトガルの公文書館に所蔵されているそれらの古文献や古地図を読み解くことで、どの船がどの海域に沈んでいるかを調査・分析します。しかし、古地図は精度が低い上、当時はまだ経度という概念がなかったため、文献から正確な沈没位置を特定することは難しく、現地での聞き取り調査や海底探査などのフィールドワークが欠かせません。そして、その船がどれくらいの財宝を積んでいたかを知るには当時の積荷目録が参考になりますが、目録に記されているのは銀貨や銀の延棒などがほとんどで、金貨や金の延棒、豪華な宝飾品など高価な品々は課税を逃れるためほとんどすべてが密輸品でした。実際には目録に記載されている2~3倍の財宝が積まれていたといわれています。

2.聞き取り調査

古文献等によって船が沈没した海域をある程度絞り込んだら、そのエリアでカニ、エビ漁や底引き網漁をおこなっている漁師たちと地元のダイバーたちを対象に聞き取り調査をおこないます。漁師たちは沈没船の残骸や積荷などをそれとは気付かずに網で引揚げている場合があったり、ダイバーたちもそれらを目撃したり持ち帰ったりしているケースがあるためです。特に船が座礁して沈没した場合には、船の残骸や積荷が海流やハリケーンなどの影響で広範囲に散在していることもあり、こうした現地での聞き取り情報が重要になってきます。こうしてさらにエリアを絞り込んでいきます。

3.海底探査

水深が浅く透明度の高い海域は、海や空から目視によって沈没船を捜索します。水深の深いエリアや、海水が泥で濁っていたり沈没船や積荷が砂の中に埋まっている場合は、磁気計測器やサイドスキャンソナー(水中音波探査器)など最新の海洋探査機器を駆使して探します。沈没船や遺物と思われるものを発見したら、ダイバーが海に潜ったり深海潜水探査艇を使用して確認します。

4.引揚げ許可取得

実際に沈没船を引揚げるためには、その海域を領海とする国から引揚げ許可を取得しなければなりません。船の所有者(国)が判明している場合は、その者(国)からも許可取得が必要です。欧米を中心とした国々ではサルベージに関する法律が整備されていることが多く、それにもとづいて諸条件の交渉・調整をおこない、正式な許可を取得します。引揚げた遺物の分配比率についても詳細な取り決めがなされます。

5.引揚げ作業(サルベージ)

一般的には最新設備を備えた大型の作業船を洋上基地として、さまざまな機器を駆使し引揚げられます。沈没船が砂に埋もれている場合は堆積物を吹き飛ばしたり、砂を吸い取って掘り下げた上で探したりします。また、ダイバーが海底で発掘したその遺物は、バルーンやクレーンなどで船上に引揚げられます。このほかにも、例えば2007年に中国政府が約46億円を投じ、800年前(南宋時代)に沈没した貿易商船「南海1号」を引揚げたプロジェクトでは、海中で船ごとコンテナに納めて巨大なクレーンでつり上げる方式が採用されました。このように、引揚げ作業は海域や船の状態に応じて適切な方法が選択されます。

6.クリーニング・保存処理・考古学的検証

長い期間海底に沈んでいた遺物は、沈没船の発見状態によっては互いにくっついていたり、その周りに緑青やサンゴ、フジツボ、石灰などが付着している場合も数多くあります。これらをクリーニングし、保存する方法は材質によって異なります。
金、銀、真ちゅう、ブロンズなどは海中で劣化しにくく、手作業で付着物を丁寧に削り落しながらひとつずつに剥離したあと、希硫酸などの薬品につけてきれいにしていきます。鉄製品などに関しては、海中のバクテリアによって浸食されほとんど原形をとどめていませんが、なかには石灰やサンゴ等で覆われ原形をとどめているケースもまれにあります。それと思われる石灰、サンゴ等の塊は、海上に引揚げたあと、X線で内容を調査し、コーティング処理をした上で取り出したりもします。海上でその塊を破壊した場合、空気に触れると急激に酸化してしまうためコーティング処理が必要なのです。
磁器製品などはある程度の強度があるため付着物を除去する場合もありますが、アンフォラと呼ばれる素焼きの壺に代表される陶器類の場合、強度があまりないため表面の付着物を除去することは難しいとされています。ただし、沈没船の状況によってはきれいな状態で発見されることも多くあります。
遺物に応じた保存処理が施された後、考古学的検証がおこなわれます。古文献などと照合しながら遺物を分析することで当時の貴重な歴史的情報を得ることができたり、新たな発見へとつながることもあるのです。

7.寄贈・売却

考古学的検証の結果、国宝級の文化遺産は人類共有の財産として、博物館やしかるべき団体などへ寄贈または売却します。豪華な宝飾品など希少性の非常に高い美術品については、サザビーズやクリスティーズをはじめとする世界的なオークションに出品したり、著名な収集家に売却します。そして、比較的数量の多いサルベージ品は一般の方々に向けて販売します。海外ではサルベージ品のマーケットがすでに確立していますが、日本においてはまったく確立していないのが現状です。私たちRSTは、サルベージ品販売の先駆者として新しいマーケットの開拓と活性化を図っていきます。

沈没船の位置を示している古い海図
コロンビア沖で引揚げられた銀の延棒の所有者が記されているスペインの古文書
船に牽引されている水上セスナ
海底探査
バルーンによる引揚げ
大型クレーンによる引揚げ
付着物がこびりついているサルベージ品
引揚げた遺物を船上で調査・保存
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